アナタと私だけの街にしよう



少女漫画やグリム童話で育ってきた脳内メルヒェン女なので、運命の人、という概念が最高に好きです。

私の運命の人はこの世界に2,3人いて、
今この瞬間その人(たち)は何をしてるんだろうなって小さい頃からよく考えてました。何してるんでしょうね。



そしてその運命の人と出会った瞬間を表現した作品に心を打たれます。




たとえば

黒田三郎の詩「そのとき」





「そのとき」



そのとき

僕はぼんやりたっていたのだった

いつ来るかわからぬ汽車を待つように

死ぬ順番を待って

この世に行列をつくって

ぼんやり並んで

切符売場で

課長や主任の下で

外食券食堂で

地獄の門

どこでだってかまやしないのだ

行儀よく順番を待って

ぼんやり立っている僕のなかを

一日は一年のように

一年は一日のようにすぎてゆくのであった

そのときも

風のようにあなたが僕のなかに舞い込んで

あっという間もなく

僕をこの世の行列から押し出した

そのときも

僕はきっと煙草をくわえて

ぼんやり立っていたのだった




なんということでしょう…

ただの日常がそこにあり、それは不変的なものであると無意識下であろうと信じて疑わなかったはずなのに
「あ」
っという間にガラリと変わってしまう。君と出会ってしまった「そのとき」に。ただ、大きく環境が変わるわけではなくて、それは日常の延長線上にあるのである。



その後日譚

黒田三郎「賭け」





五百万円の持参金付きの女房を貰ったとて
貧乏人の僕がどうなるものか
ピアノを買ってお酒を飲んで
カーテンの陰で接吻して
それだけのことではないか
新しいシルクハットのようにそいつを手に持って
持てあます
それだけのことではないか

ああ
そのとき
この世がしんとしずかになったのだった
その白いビルディングの二階で
僕は見たのである
馬鹿さ加減が
丁度僕と同じ位で
貧乏でお天気屋で
強情で
胸のボタンにはヤコブセンのバラ
ふたつの眼には不信心な悲しみ
ブドウの種を吐き出すように
毒舌を吐き散らす
唇の両側に深いえくぼ
僕は見たのである
ひとりの少女を

一世一代の勝負をするために
僕はそこで何を賭ければよかったのか
ポケットをひっくりかえし
持参金付きの縁談や
詩人の月桂冠や未払の勘定書
ちぎれたボタン
ありとあらゆるものを
つまみ出して
さて
財布をさかさにふったって
賭けるものがなにもないのである
僕は
僕の破滅を賭けた
僕の破滅を
この世がしんとしずまりかえっているなかで
僕は初心な賭博者のように
閉じていた眼をひらいたのである

                                                                              • -

ああ〜いいな〜「馬鹿さ加減が丁度僕と同じ位で」っていいな〜そういう人と生涯を共にしたすぎるでしょ

そんでまた相手のことを良く描いてないところもいいね
毒舌なのね…
「胸のボタンにはヤコブセンのバラ」ってすごくない?ヤコブセンとはデンマークの詩人です。『ここに薔薇あらば』という詩を書いています。

結婚するために破滅を賭けたんだってさ。一世一代の賭けじゃないですか。カシオミニとかじゃなくてよかったね(伝われ)。ていうか破滅を賭けるってなんや。






そんでまた、運命の人と出会った瞬間を描いた作品その2
地上はポケットの中の庭田中相

地上はポケットの中の庭 (ITANコミックス)

地上はポケットの中の庭 (ITANコミックス)

漫画です。
表題にもなっている短編です。


フランス?に住むおじいちゃんが主人公。自分の誕生日を祝われていますがなぜか不機嫌。そんなおじいちゃんの回想シーン、奥様と出会った時の描写。


「アンヌと出会ったときは」

「どこかあきらめにも似た気持ちでもって」

「あーあ」
「と思った」


ノローグだけ書き出しましたが、漫画ですのでコマの進む絶妙なテンポや絵も素晴らしいんです。映画を観ているみたい。
出会ったまさにその"瞬間"は、絵だけで表現されています。当時のおじいちゃん(まだ若い)とおばあちゃん(アンヌ)が交互に描かれます。


出会ったとき、何を思ったかって、
「あーあ」なんですよ。諦念をもってですよ。素晴らしい。素晴らしすぎる。
出会ってしまったらもう運命には抗えない、諦めるしかない。諦めて身を任せるしかない。

諦め。




はい。次は、運命の人と出会った瞬間ではなく(瞬間というのはほとんど直感であり理性を通していない)、出会って、頭でちょっと考えてからの作品です。



出典は安野モヨコ画集なのですが↓

今手元になくて…!実家にある…!
ていうかなんならもう9年近く開いてないのでは。

今度実家に帰ったらちゃんと書き直しますので、今覚えてる範囲で書きます。よく覚えてないけど、大正か昭和の女の子が書いた詩です。

「鍵」

乙女の心の戸を開ける、鍵はひとつでありました。

たったひとつのその鍵を、私はあなたにあげました。

                                                                        • -

細かい違い(漢字表記とか)はあれど、こんな感じです。
初めて読んだ時(10年前よ)衝撃を受けたなあ…。

はい、まさにそう。鍵はひとつしかないのよね。1人だけにあげるのよね。


鍵つながりで、もう1つ。竹久夢二「鍵」

これも手元にないんですよ詩集が。
朗読を聞きながら文字起こししてるので、細かい違いたくさんあると思いますが、ご了承ください。手に入れたら書き直します…!





「鍵」







「そんなにたくさんの鍵をどうなさるの?」
女が尋ねた。

「女の心の扉を開けるのだ」
男は答えた。

「1つの鍵ではいけないの?」
「そうだよ、女はどれもこれも、異なった鍵穴を持っているからね」
「あなたはいつか、女の心を開けたことがあって?」
「一度もないよ。どの鍵を持っていても、合わなかった。」
「そうでしょうね。女の心っていうのは、たった1つの鍵で開けなきゃ開かないものよ。それを合鍵で開けようってのは、少し虫がよすぎるわよ。教えてあげましょうか。あなたはね、ほんとうのあなたの鍵だけを持って、あとはみんな、悪魔にやっておしまいなさい。そしてあなたは、あなたの鍵で、たった1つのあなたの鍵穴をお探しなさい。きっとどこかに、あなたを待っている娘があってよ」



                                                                              • -

はい出た!鍵理論!(なんだそれ)

安野モヨコ画集に載ってた前の詩はこの夢二の本歌取りならぬ本詩取り的な感じなのではないか?と思わないでもないですね。鍵を持つ立場が逆ですけどね。

鍵理論(なんだそれ)、まさに運命の相手感あって最高な概念ですね。この歳になってくると突貫工事してまで鍵穴の形を変えないとうまくいかないこともあるけどなあとか思いますがね。すいません。

竹久夢二かっちょいいなあ〜〜〜〜〜
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また何か見つけたら追記します。


















おはよう
また今日が始まったね
おやすみが云えるだけ有りにしよう
ひどく考えんだ 狂わしてよ
アナタと私だけの街にしよう

🎵Hug / Mrs.GREEN APPLE





TWELVE

TWELVE



はい。このアルバムで一番好きな曲、Hug。
歌詞が意味わからんですが…いやわかるけど…
最後のおおおお〜お〜おおおお〜のとこ最高すぎて悶えます。
ネガティブな曲好きです。




おやすみ。